著作権と表現の自由を守ろう
最近、小林よしのり氏の関係者と称する人物が、小林氏の著作を利用しているサイトの運営者に対して、法的措置を示唆するメールを送付しているという情報があります。
実際に関係者であるか否かを問わず、もしこれが実際に著作権を重視し、違法サイトに警鐘を鳴らすものであれば、本サイトとしてはこれを歓迎すべきものであると考えています。
しかし送られたサイトやメールの文面からみて、実際にはこれらのメールは著作権に根ざしたものではなく、単に小林氏に対する批評を封じたいがために、著作権という偽りの口実を使っていることがほぼ確実です。
本サイトは、他者の著作物を利用してサイトを作っているすべての人に対して、著作権法を遵守すること、そして著作権という口実を騙る不当かつ下劣な圧力に屈することなく表現の自由を貫くことを求めます。2000年7月27日
著作権を考えるネットワーカー有志 Jim Phelps
「脱ゴーマニズム宣言」訴訟をご存知ですか?
小林よしのり氏の著書「ゴーマニズム宣言」(扶桑社)「新ゴーマニズム宣言」(小学館)を批評した上杉聰氏の著書「脱ゴーマニズム宣言」(東方出版)において、小林氏のマンガ57カットを引用していることに対して、「マンガの(無許諾)引用は認められないから著作権侵害にあたる」として小林氏が訴訟を起こしたものです。1999年8月31日の第一審(東京地裁)は上杉氏の全面勝訴、2000年4月25日の控訴審(東京高裁)では1カットについて同一性保持権侵害を認めたものの、引用は適法と認められました。
小林氏は、自らの著書「新ゴーマニズム宣言」103章「『引用』と称する便乗本時代の幕開け」(雑誌「SAPIO」1999年10月13日号初出、のちに単行本第8巻に収録)において、この判決を批判しつつ、自らの正当性を訴えています。ところが著作権問題を論じている作品であるにも関わらず小林氏は、著作権に関する認識の誤り、判決文の意図的としか考えられない歪曲などを多数行っています。
もとより「新ゴーマニズム宣言」はマンガであり、ギャグの一環として一笑に付することも不可能ではありません。しかし私たちは、以下の理由により、この問題を看過することができないと考えるに至りました。
上記の観点から私たちは、同書の中から特に重大な誤りについてインターネット上で指摘することにより、著作権に関する正しい知識を広める一助とすると共に、同書を執筆した小林よしのり氏、および刊行した株式会社小学館に対して猛省を促し、下記の問題について早急な正誤訂正を強く推奨するものです。
- このマンガ作品が社会批評として現実に影響力を持っていること
- そうした影響下にある人の一部がインターネット上などで、小林氏の主張を無批判に受け入れ、さもそれが事実であるかのような虚偽の情報を流布する動きがあること
- インターネットの急速な普及により、職業的創作者でない一般市民にとっても著作権の啓蒙の必要性が高くなっていること
- 小林氏の記述の中に、著作権に関して多くの人が誤解しており、悪意なき著作権侵害を助長しかねない内容が含まれていること
雑誌「SAPIO」1999年10月13日号に掲載された連載漫画「新ゴーマニズム宣言」103章「『引用』と称する『便乗本』時代の幕開け」において、著者である小林よしのり氏は左図に引用した通り、自身の似顔絵を2点掲載し、欄外にこの似顔絵に言及して3つの注意書きを行っています。
- 「山藤章二の似顔絵塾」に入選した川端櫻子さんの作品.許諾を求めてOKだったので引用しました
- 土屋ヒデル氏に許諾求めたが拒否されたので わしが模写しました
- (C)『週刊朝日』(98年9月11日号)「山藤章二の似顔絵塾」より(原文の冒頭はマルCマーク)
※注
左図の画像は、「SAPIO」1999年10月13日号74ページからの引用です。赤のマルつき数字は引用者によるものです。
これは著作権法第32条1の規定による引用であり、著作者の許諾を得ていません。なお、この画像を本来の目的外に利用すると著作権法の規定により罰せられます。第三者がこの画像を本ページ外で利用した場合の責任は、その利用者が負うものとします。
この欄外の記述3ヶ所のすべてに、著作権法およびその運用上不適切な内容を含んでいます。
1に「許諾を求めてOKだったので引用しました」とありますが、著作権法第32条に定める「引用」は、許諾を求めて行うものではありません。著作物を扱う際の慣例として、許諾を得て著作物の一部を複製して掲載する場合は「引用」ではなく「転載」と言います。このことを大手出版社である小学館が知らなかったことはあり得ません。
2は著作権法上、重大な疑義があります。この記述は小林よしのり氏が、複製許諾を得られなかったから、模写することによって無断で利用したということを表明するものです。しかし著作権法に定める「著作物の複製」には、コピー機やスキャナーを用いる複写だけでなく模写も含まれます。漫画においても、かわぐちかいじ氏の「沈黙の艦隊」(講談社刊)において、艦船の写真を無断で模写したことが著作権侵害に問われた事例などがあります(この事例においては、かわぐち氏と講談社が即座に誤りを認めて適切な措置を講じたため、訴訟には至っていません)。
私たちは小林氏によるこの模写(複製)が、著作権法32条に定めた「引用」であると認め、無許諾であることを理由に著作権侵害に問うべきものではないと判断します。しかしながら、当の小林氏は、絵を利用するにはすべて許諾が必要だと主張しているのであり、小林氏の主張に従うならば、この模写は自ら著作権侵害を犯していることになります。
3は著作権を示すマルCの使い方を誤っています。現在の日本国著作権法のもとでは効力を持ちませんが、マルCは著作権の帰属を明確に示すものとして、今でも比較的広く用いられています。
しかし「週刊朝日」の著作権は朝日新聞社に帰属するので、(C)『週刊朝日』という表記は現実にあり得ません。つまりこれが著作権帰属に関する虚偽の記載であることは疑う余地がありません。
1については、著作権法が引用に際して許可を求めることを禁止しているわけではないので、さして重大な問題はありません。しかしながら、このような記述は、許諾がなければ引用できないかのような誤解を与え、正当な引用による言論活動を阻害するおそれがあります。
この3つの中で最も重大なのは2です。今回の「脱ゴーマニズム宣言」訴訟において、批評を目的とするマンガの引用が認められることが示されました。しかしこれは野放図に利用して良いものではなく、おのずから一定の制約があります。しかし小林氏の記述が、引用の要件を満たさない場合は模写して良いかのような印象を与えることは明らかです。マンガを扱う創作をする人がこのような記述を読み、それを信じたとすれば、著作権法上の引用の要件を満たさない状況でマンガを模写して、結果として著作権侵害に問われる事態を引き起こしかねません。その意味では2の記述は、悪意なき第三者に対して著作権侵害を犯させしめる可能性を持つものであり、違法行為を助長する記述と言っても過言ではありません。
3は推察するに、「週刊朝日」の著作権を保有する朝日新聞社からの許諾条件として出典を記載する際に、記載様式を明示されたにも関わらずマルCを書き加えてしまったものと思われます。マルCの使い方は通常、著作者ごとに表記方式を決めており、All Rights Reservedの記載の有無、年次記載の有無、マルCの後のbyの有無、著作者名の表記形態、これらの情報の並び順などが一意に決められているのが普通です。このマルCマークをこのようにおざなりに扱うことは、著作権の帰属関係について混乱を生じさせるだけでなく、こうしたいい加減なマルCマークの使い方が蔓延した場合、こうした表記自体の信頼性を失墜させるおそれがあります。マルCの意味を考えれば、現在ではほとんど機能していないことも事実です。しかしそうであったとしても、国際条約で定められた表記様式において虚偽を記述することが免責されるものではないことも、論を待たない明白な事実です。
私たちは、このホームページで問題を提起することにより、ネットワークに関わる全ての人が、著作権についてかかる間違いを犯すことのないよう正しい知識を啓蒙すると共に、このような虚偽を放置する小林よしのり氏および小学館に反省を促し、「新ゴーマニズム宣言」第8巻の正誤訂正を早急に行うよう求めたいと考えています。
このため、このホームページを読み、その趣旨に賛同していただいた方に、以下のことを要望したいと思います。
このホームページを通じて、多くの人が著作権の大事さを認識し、正しい知識を共有するための一助となるよう、私たちは願っています。
- 小学館または小林よしのり氏に、この問題を糾す問い合わせを行うこと
- 著作権に関心を持つ人または団体に、このホームページを紹介すること
- 下記の連名に加わっていただくこと
このホームページは、Yahoo! 掲示板の「ホーム > エンターテインメント > コミックとアニメーション > 全般」カテゴリーに属するトピック 「『ゴー宣』著作権問題の判決について」における議論を契機に制作したものです。この掲示板では、多くの人たちがこの問題について意見交換し、著作権について考えを深めるに至りました。
その議論の中で、このページの末尾にある連名記載者の一人が、小林氏の「新ゴーマニズム宣言」103章の中に、著作権について誤った記述や、著作物の不適切な扱いが多数あることを指摘しました。そして少なからぬファンがその誤った内容を無批判に受容していること、またこの誤りがネットワークの普及に伴い重大な問題を引き起こしかねないことに危機感を持った有志が、こうした誤りを改めさせるべく、このページを開設しました。
なお、同じ掲示板を契機に作られたホームページはこのほかに、上記とは別の連名記載者が制作した「引用と著作権の問題を考えるページ」があります。著作権と引用をめぐる有名な事例について詳しく紹介し、著作権の専門知識を持たない人にもわかりやすいようまとめられていますので、ぜひご覧ください。
2000年4月22日著作権を考えるネットワーカー有志
2000年4月4日 第1案公開
(以下はネットワーク上のハンドルネーム)
Jim Phelps
梅干
poli_wag
hinode_master
PearlRice
suzuki_99_99
dava_dava
Complexy straight
siegen
boo_daikuroh
massalaca
JOHN_VOID
2000年4月7日 改訂第2案公開
2000年4月19日 全面改訂第3案公開
2000年4月21日 改訂第3案連名追加版公開
2000年4月22日 正式公開
2000年4月23日 第1回マイナーチェンジ
2000年4月25日 一部訂正
2000年4月28日 一部記述追加
2000年7月27日 臨時アピール追加
2000年12月16日 一部記述訂正・追加